【症例】根管治療だけでは治癒に至らない歯を歯根端切除術で保存
- 投稿日:2021.09.06
- カテゴリー:歯根端切除術
治療概要
治療内容 | 再根管治療・歯根端切除術|精密根管治療 | 期間 | 2ヶ月 |
---|---|---|---|
治療回数 | 6回 (経過観察は含めない) |
費用 | 693,000円(税込) 精密根管治療4本 歯根端切除術3本 ※処置当時の料金 |
治療前の状態・主訴
患者様は、既に入れてある補綴(被せもの)を新しいものに変える予定があり、かかりつけ医より当院に「精密根管治療(歯内療法)のみお願いしたい」と依頼されました。
診査を行ったところ、上顎右側3番(犬歯)の根尖部付近に、根尖性歯周炎と見られる透過像が大きく広がっていました(写真 下段左)。また、上顎左右1番(中切歯)にも同様に病変が確認できました(写真 下段中)。
患者様は、日常生活では特に違和感を感じることはないそうですが、上顎右側3番根尖部を触診すると、明らかな違和感を訴えていました。
治療詳細
精密根管治療(歯内療法)終了後、患者様は術前同様に、特に症状は訴えていませんでした。しかし治療終了から3ヶ月経っても、病変の縮小は確認できませんでした。
患者様は今後、セラミックによる被せものを製作して、今回治療した歯に装着する予定があります。そのため、根尖性歯周炎の悪化を予防する意味も含めて歯根端切除術を行い、病変を完全に治癒させることをご提案いたしました。
治療後の様子
精密根管治療(歯内療法)終了後1年が経過し、レントゲンでも根尖性歯周炎の治癒が確認できました。病変が大きいため、レントゲン上の治癒像は特徴的ですが、硬組織(歯や骨)の治癒は良好と判断できます。
歯肉の状態も、術後3ヶ月では切開線の瘢痕が若干確認できたものの、1年後の経過観察では上顎前歯部にはほぼ見られず、非常に良好であると判断できます。
主な副作用・リスク
・精密根管治療(カウンセリングを含む)、歯根端切除術は自由診療です。
・治療計画は口腔内、歯牙の状況により変更する場合があります。
・インプラントを含む外科的処置にて下歯槽神経を損傷した場合、顔面に知覚麻痺が生じる場合があります。
・当院の補綴処置の保証期間は5年間です。ただし、3ヶ月〜6ヶ月の定期メインテナンスや検診に来院されていない場合は適用されません。
<歯根端切除術など外科的治療は、患者様の利益になるか、あらゆる角度から考察し判断することが重要です>
今回の症例は、現状では日常生活に影響を与えるような症状は出ていない根尖性歯周炎でした。しかしその病変は大きく、通法の根管治療では治癒に至らなかったため、歯根端切除術を行いました。
根尖性歯周炎のうち、「嚢胞」という病変が現れる確率は約15%と言われています(※参考文献)。嚢胞は上皮で覆われているため、骨に置換されることはありません。このような難治性の根尖性歯周炎の場合、根管治療に加えて歯根端切除術を行うことで、病変自体を外科的に除去して治癒を目指すケースもあります。
(※)参考文献
・Crit Rev Oral Biol Med 2004 Nov https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15574679/
・Int Endod J 1998 May https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10321160/
今回のケースでは、今後セラミックによる被せものの装着が予定されており、歯根端切除術を施し、根尖性歯周炎の悪化を予防することが患者様にとって有益であると考えられました。
患者様は無事ご自身歯を保存することができ、1年後の経過観察時にはセラミックの被せ物を問題なく使っておられ、歯肉の状態も良好でした。
外科的な治療は、その治療が患者様にとって本当に利益になるものか、常にあらゆる角度から考察し判断していくことが重要です。
目白マリア歯科では、世界基準の治療方針(コンセプト)を守った精密根管治療を行っており、治療後は最低でも2年間は経過観察をしています。歯の痛みや違和感がある方、特に症状がなくても気になる方は、一度、当院の「精密根管治療 初回カウンセリング」にてご相談ください。
こちらも併せてご覧ください。
目白マリア歯科|精密根管治療
目白マリア歯科|根管治療・歯内療法
宮澤 仁Miyazawa Jin院長紹介ページはこちら
専門分野
- ・根管治療
所属
- ・アメリカ歯内療法学会
- ・日本歯内療法学会
カテゴリー