Prosthetic treatment
噛み合わせ・補綴治療
噛み合わせ・補綴治療について
治療によって歯を削ると、咀嚼機能が失われるとともに、歯の物理的な強度が弱くなります。 そのため、咀嚼機能の回復と、歯の強度を補う目的で、詰め物や被せ物などの歯科材料による補綴処置が必要になります。 このように、「歯として使う部分を人工的に形成する」分野を保存治療または補綴(ほてつ)治療と呼びます。
補綴処置を行った歯が多くなるほど、本来その方が持っていた噛み合わせは崩れやすくなります。 そのため、これまでに多数の歯に補綴治療を受けている場合は、適切な噛み合わせが再現されていない可能性もあります。
また、補綴処置の有無にかかわらず、ご自身の噛み合わせの状態によっては、 オープンバイト(前歯が噛み合わない状態)や犬歯誘導の喪失などが原因で、奥歯や顎関節にトラブルが見られる方もいらっしゃいます。 このような場合には、「ワックスアップ」によって現状の噛み合わせと顎関節の位置を診査し、治療計画を立てる必要があります。
補綴治療は口腔内の
あらゆる面に関わります
補綴は噛み合わせや見た目の美しさ、
長持ちのしやすさ、メンテナンスのしやすさなど、
あらゆる面に関わってきます。
治療前に立案する治療計画をもとに、いかに正確に治療をすすめられるかが治療を成功させるためのカギとなります。その被せ物は口腔内が健康な状態で装着されるべきなのです。
機能性と美しさを両立させる
補綴治療
噛み合わせや補綴治療を行う際には、機能面の回復と審美的な要求の両方を満たす治療が求められます。
その治療の規模は、噛み合わせのずれや既存の治療歯の数、歯周病の有無などによって異なりますが、介入前の段階で、どの程度の治療が必要かを的確に把握することが大切です。
審美歯科と聞くと、「白いセラミックで歯並びや色を整える」というイメージが強いかもしれません。しかし本来の審美歯科とは、機能的であることはもちろん、お顔立ちや肌の色に調和する形態の補綴物(被せ物)を装着することを意味します。さらに、装着後も歯ぐきや口腔内の健康が維持できるよう、生体適合性まで追求する治療を指します。
歯科治療が原因で炎症を引き起こすことは、どんな治療であっても決してあってはなりません。生体親和性を高めるためには、診査・診断の段階で「どの治療法を選択すべきか」をしっかり検討し、各治療のステップで生体に炎症が起きていないかを再評価しながら治療をすすめていくことが大切です。
なお、最終的な治療計画の決定にあたっては、患者様ご自身のご希望や生活リズムといった「時間軸」を最優先に考慮する必要があります。診断の結果を踏まえたうえで、しっかりと話し合いを行い、治療方針を決定していきます。
歯(口腔内)の健康な状態とは
- 歯や根に感染がない状態(虫歯・根尖性歯周炎がない)
- 歯周ポケット3mm以下であり、歯肉に炎症がない
- 適切な咬合と機能的な補綴形態の両立
- フィッティングの良い被せ物
- セルフメンテナンスがしやすい環境
これらが達成されてはじめて口腔内は健康な状態であると言えます。
そのためには、適切な診査と診断を行い、治療開始前に歯科医師が口腔内の環境を完璧に把握し、効率の良い治療計画を立案することが必要不可欠となります。
手当たり次第に治療を行えば、結果として顎位のずれや治療期間が長くなる原因となります。そのため治療を担当する歯科医師自身が治療の難易度を正確に把握する必要があります。
歯科治療における難易度の
考え方
歯科治療の難易度を簡単にclass分けすると、下記のようになります。
- class 1
- 軽度な虫歯治療、歯周治療で治療が完了できる場合
- class 2
- 詰め物・被せ物によって咬合の回復ができ、軽度の歯周治療で治療が完了できる場合
- class 3
- 多数の不適合な補綴物によって噛み合わせが崩れた状態だが、顎関節が安定している状態。
もしくは中等度の歯周病までの状態。
治療には咬合の再構築が必要になる可能性があり、治療前には咬合の診査、ワックスアップが必要。 - class 4
-
多数の不適合な補綴物や欠損歯があり、顎関節の位置が不安定な状態。
もしくは重度の歯周病に罹患している状態。
治療には、咬合の再構築が必要になり、治療前には咬合の診査、ワックスアップが必要。
非常に難しい治療となる。
Calssレベルが上がるほど、より治療が困難になります。
分かりやすく歯の治療を家の建築に例えると、下記のように考えられます。
- class 1、class 2:家の中の補修工事程度
- class 3:家のリフォーム(設計図が必要)
- class 4:家を基礎から建築する作業(土台から設計をする必要がある)
class 1、class 2は設計図がなくても、やり方が分かっていればできるかもしれません。
しかし、class 3、class 4はどんなに有能な技術者がいたとしても、設計図がなければ進めることは難しく反対に図面を書く人が優秀であれば、より効率的にしっかりとした建築物ができあがるでしょう。
精密な診断を行うために
口腔内写真、歯周検査、レントゲン(10枚法)パノラマX線写真、必要に応じてワックスアップ(模型)を採得するところから、診査がはじまります。
CTや最先端機器を使用した検査は診断の助けにはなりますが、基本的な診査は2025年の現代でも上記のようなアナログ的なものに変わるものはありません。
集められたすべてのデータをもとに、患者様が訴える主訴・症状に対しての診断はもちろんのこと、なぜそのような症状が起きたのかということまで考察します。この資料取りは術前の治療計画はもちろん、術中の再評価、術後の経過観察でも非常に重要な資料になります。
治療後の「良質な補綴物」と「適切な噛み合わせ」「日々の生活でのセルフメンテナンスのしやすさ」をシミュレーションするのがワックスアップ(※)であり、術前の診査の際に採得した資料と併用して個々の症例でどういった治療が必要になるかを診断します。
※ワックスアップとは
歯の機能と見た目の美しさを考慮したデザインをシミュレーションするものです。一人ひとり異なる患者様の口腔内について問題点や最終補綴物の形態を確認して、治療計画の立案を行います。
治療計画1(全顎的症例)
過度な食いしばりと、不正な噛み合わせにより奥歯のほとんどが歯根破折を起こしてしまい、全顎的な噛み合わせの再構築を必要とする症例。
現時点で垂直的な顎位を保存しながら適切な噛み合わせを付与するための治療計画を立案した。
適切な噛み合わせを左右均等に付与したことで、バランスの良い噛み合わせを構築し、結果前歯への負担も軽減された。
初診時には、お肉など硬いものの食事を控えているなど、患者様の生活の質は著しく低下していたが、現在では食事、会話をするときにも口元を気にすることがなくなり、日常生活でのストレスは軽減された。
適切な噛み合わせを左右均等に付与したことで、バランスの良い噛み合わせを構築し、結果前歯への負担も軽減された。
前歯が短く、笑うと歯茎が目立つガミースマイルによる笑顔のコンプレックスを改善した症例。 前歯3本の幅の黄金比(0.6:1.0:1.6)は確保されているが、中切歯の縦:横比が1.0:0.8から大きく外れている。左上2番の歯肉ラインが高く、中切歯は低い。歯肉ラインの不調和が著しい。
歯肉ラインを整え、前歯の縦横比を適正化する治療計画を立案。ワックスアップで理想の形態とバランスを可視化し患者様と共有の上で治療を開始。
歯と歯茎のバランスを黄金比に近づけ整えたことで、自然で美しいスマイルラインを獲得。前歯の長さ・歯茎の形・噛み合わせの調和が改善され、治療後は笑顔に自信をもっていただけました。
初診時には笑う際に上唇へ力が入ったり、無意識に口元を隠すなどの仕草、大きく口を開けられないといった癖がみられたが、治療後は笑顔で話し、写真を撮る際も自然に笑うことができていた。
トップダウントリートメント
トップダウントリートメントでは、まずはじめに病的な状態を把握した上で、理想的な咬合や機能面、審美的な要件を考慮した治療計画を立案します。
しかし、治療の規模が大きくなればなるほど、患者様の負担(金銭面、時間など)も大きくなり、必ずしも患者様の理想の治療となるとは限らないため、患者様の希望を踏まえ、最大限の治療から引き算をして最終的な治療計画を決めていきます。治療計画は患者様の健康を第一に考えるとともに、時間軸を尊重して決定されるべきです。
歯科治療の流れ
- Stage1虫歯治療・根の治療・歯周基本処置
-
歯科の基本治療。
細菌性の炎症を徹底的に除去する目的で行われる治療ステージ。 - 再評価
- Stage2外科処置を含む治療歯周外科処置・
歯周形成外科・再生治療・インプラント・矯正 -
外科的な処置を含む治療。
Stage1で取り除けなかった炎症を除去する目的で行われる歯周外科や、インプラントや矯正のように治療開始後に後戻りすることができない治療ステージ。 - 再評価
- Stage3最終補綴
- Stage1.2で完全に炎症が除去されたことを再評価で確認した上で、適切な咬合が付与されているかを仮歯によって確認した後、最終的な被せ物を装着する治療ステージ。
- 再評価
- Stage4メンテナンス
- 新しい虫歯や歯周病を予防することはもちろん、定期的なレントゲン撮影と歯周組織検査を行うことで、経年的な変化やトラブルをしっかりとチェックすることが重要です。
最終的な補綴物について
上記のようにstege1、2の治療と再評価によって、口腔内の炎症がすべて取り除かれたことを確認し、その後に装着する最終補綴物は下記のようなことに注意をはらい進めていく必要があります。
Stege1、2の治療が順調に進み炎症がなくなったとしても、最終的な被せ物によっては再度口腔内に炎症が起こる可能性は十分に考えられるため、最終的な被せ物の質は大変重要になります。
治療中に使用する仮歯の意味
当院では、最終的な被せ物(補綴物)を装着する前に、必ず プロビジョナルレストレーション(仮歯) を用います。「プロビジョナル(provisional)」は “仮の”、「レストレーション(restoration)」は “補綴物” を意味し、単に見た目や噛む機能を保つだけの一時的な歯ではありません。
仮歯で確認する5つのポイント
- 歯ぐきへの炎症が起こらないか
- 適切な咬み合わせが付与されているか
- 頬や粘膜を咬み込まないか
- 審美性(色・形)が満たされているか
- セルフケア(ブラッシング)がしやすい形態か
これらを事前に検証し、最終補綴物装着後のトラブルを予防します。
具体例
歯周治療(Stage 1・Stage 2)で炎症が治まった後 に仮歯を装着し、再び炎症が生じる場合
→ 最終補綴物でも炎症が継続する可能性が高い
咬み合わせが不十分/厚みが足りない仮歯
→ 脱離や最終補綴物の破損リスクが高まる
なぜチェアサイドの調整だけでは不十分?
診療チェア上で確認できる咬合は、上下・左右の単純な顎運動が中心です。実際の「咀嚼」は複雑かつ多方向にわたり、診療室内で完全に再現することは困難です。一定期間プロビジョナルレストレーションをお口に装着していただくことで、日常生活における 予期せぬ咬合干渉 まで把握でき、最終補綴物をより安心して装着することが可能になります。
目白マリア歯科では、
すべての治療をコンセプトに
沿って行っています